慶應義塾大学附属研究所 | 斯道文庫 - KEIO Institute of Oriental Classics -

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所蔵資料

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特殊文庫寄託資料その他の貴重書

 約70,000冊の寄贈図書からスタートした附属研究所斯道文庫ですが、創立より55年を経た今日、蔵書は2倍以上の約175,000冊(寄託書51,700冊を含む)に達しています。

 財団法人斯道文庫の蔵書は、東洋文化の研究所に相応しく、人文科学・社会科学の各分野を覆っており、中でも日本漢学・日本儒学・東洋哲学・国語国文学・中国文学・国史学・東洋史学に関する書籍が豊富です。その分類は、2桁の数字で門や項を、目や分目は1桁の数字で示し、必要に応じて亜項を大文字アルファベット1文字で、亜目を小文字1文字で記し、主題の選定や排列は日本十進分類法に倣いながらも独自であるという、文庫オリジナルの図書分類法によっており、現在でも基本的にそのままに配架されています(函架番号シ)。後述する特殊文庫を別置する他は、古典籍も洋装本も混配されており、稀覯書よりも実用的な基本図書の蒐集に力を注いでいたことが伺えます。

 しかしながら、実用書ばかりでは専門的な研究は行えないので、これを可能にするために、麻生氏の個人資金によって購入され、斯道文庫に寄贈・寄託されたのが「特殊文庫」と称される資料群です。それらは現在でもほぼそのままの形で保存されています。特殊文庫の性格は、財団時代の斯道文庫の研究の方向性を示しているとも言えますので、以下にその主立ったものの概要を説明します。なお、特殊文庫は個々に函架番号を有しています。

特殊文庫

椎本(しいがもと)文庫(函架番号09A)

 江戸後期の著名な国学者で、本居宣長に対抗して独自の学風を樹立した、橘守部(たちばなもりべ・1781~1849)の旧蔵和書約240冊(自筆稿本59点を含む)からなり、1939年の売立時に天理大学図書館とほぼ折半した形で落札されたものです。天理大学図書館と斯道文庫のものと、近年に橘家から二松学舎大学に寄贈された資料をも併せ見ると、橘家の蔵書と守部の学問の全体像をほぼ窺うことが出来ます。売立から漏れた蔵書や関連資料の追加購入は、現在でも継続して行っており、最新の状態を伝える目録としては、川上新一郎「慶應義塾大学附属研究所斯道文庫橘守部関係書目録」『斯道文庫論集』39輯・2005、「同(続)」同41輯・2007があります。

安井文庫(函架番号ヤ)

 幕府昌平黌教授で、江戸期日本儒学の大成者とされる安井息軒(やすいそっけん・1799~1876)と、その外孫で旧制第一高等学校教授であった朴堂(ぼくどう・1858~1938)の二代の蒐書約6,000冊からなり、その内の自筆稿本や手写本・書入れ本等の約100点が貴重書として別置されています。こちらも市場に現れる関連資料を継続して収集し、更なる充実を計っています。『麻生文庫稀覯書目録』1951に稀覯書が紹介され、目録及び書目には、高橋智「安井家の蔵書について:安井文庫研究之二」『斯道文庫論集』35輯・2001、同36輯・2002があります。

浜野文庫(函架番号ハ)

 大東文化学院理事であった漢学者、浜野知三郎(はまのともさぶろう・1879~1941)旧蔵の和漢書約11,500冊で、和漢の古書と明治後の漢学関係を中心とする学術書からなります。その中には、安井息軒の師で江戸後期の儒者として名高い松崎慊堂(まつざきこうどう・1771~1844)の自筆稿本類170点や、猪飼敬所(いかいけいしょ)・古賀精里(こがせいり)等の名だたる儒者、狩谷*(木+夜)斎(かりやえきさい)・市野迷庵(いちのめいあん)等の高名な考証学者達の、自筆本や書入本を始めとする約1,100冊の貴重書、あるいは菅茶山(かんちゃざん)宛の書簡約140通等があります。また森鴎外に史伝小説の資料を提供していた関係で、鴎外筆の付箋のある本もあります。善本略解題として、大沼晴暉「浜野文庫善本略解題(一)」『斯道文庫論集』23輯・1989、「同(二)」同24輯・1990、「同(三)」同25・1991、「同(四)」同27・1993、「同(五)」同28輯・1994、「同(六)」同30輯・1996があります。

 これらは財団創設間もない時期に、麻生氏が私費で購入して斯道文庫に寄託したものです。椎本文庫と安井文庫は創立3周年を記念して寄贈されましたが、1942年に購入された浜野文庫は、1980年に至って指定寄附として慶應義塾に寄贈され、正式に斯道文庫の所蔵となりました。幅広い分野にわたって基本図書と貴重図書を備える浜野文庫は、現在でも斯道文庫の蔵書の中核としての地位を失うことなく、大いに活用されていますが、福岡時代にレファレンスブックとして研究室に配架されていた、実用的な字書・辞典類の一部は、惜しくも空襲によって焼失してしまっています。なお、浜野文庫本に捺された「浜野文庫」の印が湾曲しているのは、空襲による火災の際に金庫内で高熱に晒されたことによるものです。戦争の悲惨さを忘れることがないように、戦後もそのまま使用されました。

財団時代に弛まぬ蒐書活動が行われたように、慶應義塾大学の附属研究所として再スタートを切った後も、研究活動の対象や補助資料となる古典籍類の蒐集は絶えることなく精力的に続けられています。後述するような購入によるものだけではなく、寄贈や寄託による増加も著しいものがあり、新生斯道文庫の研究の方向性に大きな影響を与える存在となっています。附属研究所となってからの増加分で、「特殊文庫」として別置されている資料群の概要を以下に説明します。

亀井家学文庫(函架番号マ)

 松永安左エ門・安川寛・亀井英子の三氏から寄贈された、江戸後期の福岡の大儒、亀井南冥(かめいなんめい・1743~1814)・昭陽(しょうよう・1773~1836)父子を中心とする、亀井一族の自筆稿本や旧蔵書約370冊からなります。財団時代から蒐書対象であったものが、移管後に充実し、さらにその調査活動を通じて寄贈が重なるという、研究所としては理想的な集まり方をした資料群です。近時も関連資料を纏まって収集し、コレクションに一層の厚みが増しています。本文庫本を含む亀井家の総合的な書誌解題として、阿部隆一「亀井南冥昭陽著作書誌」『斯道文庫論集』16輯・1979があります。

平岡文庫(函架番号ヒ)

 慶應義塾大学名誉教授であった平岡好道氏より寄贈された、東京佃島の住吉神社社家平岡家の旧蔵書約3,200冊で、その内和装本が約1,500冊あります。それらは近世期の多岐の分野にわたる版本が中心で、著名な国学者賀茂真淵(かものまぶち)の自筆稿本や、天皇陵図絵巻等の貴重書も含まれています。

大曽根文庫(函架番号オ)

 日本漢文学を専門とした中央大学教授大曽根章介(1929-93)の旧蔵書で、約400点からなります(洋装本を除く)。古代から近世まて?、幅広く日本漢文学関係書を収集しています。

今関文庫

 漢学者・漢詩人であり、戦前戦中は政府要人の顧問としても活躍した今関天彭(1882-1970)の旧蔵書で、約1000点からなります(洋装本を除く)。主要な蔵書は現在カリフォルニア大学バークレー校および名古屋市立鶴舞図書館にあり、その残りで晩年まで手元に置いていた漢籍および日本漢詩文関係書、それに交遊のあった日中の文化人・政治家等からの書簡類、自筆の日記・原稿などが寄贈されています。

松林桂月文庫(函架番号マ2)

 南画家松林桂月(1876-1963)旧蔵書で、約200点からなります。画論・法帖・漢詩文なと?があります。

永島文庫(函架番号語)

 中国音韻学を専攻した東京都立大学名誉教授永島栄一郎(1900-78)の旧蔵書で、約250点からなります。明清およひ?民国時代の文字・音韻関係書などがあります。

ガスパルドヌ文庫(函架番号G)

 フランスの東洋学者エミール・ガスパルドヌ(1895-1982)の旧蔵書で、約400点からなります。主たる研究対象であったヴェトナム関係の漢籍およびヴェトナム本が中心です。その他の蔵書のうち欧文書は図書館、原稿類は言語文化研究所が保管しています。

この他、藤山愛一郎氏より慶應義塾に寄贈された藤山工業図書館旧蔵書中の和装和漢書約2,000冊が斯道文庫の蔵本となっています。


こうした寄贈図書とは別に、保存と活用を目的として、斯道文庫に寄託された書籍約51,700冊があります。その主なものを以下で説明します。

寄託資料

坦堂(たんどう)文庫 (函架番号ホ)

 旧熊本藩主細川家所蔵の美術品や文化財を受け継ぐ公益財団法人永青文庫の所蔵で、1965年に寄託されました。熊本出身の漢学者で東洋大学教授であった古城貞吉(こじょうていきち・1866~1949)旧蔵の、清版を中心とする漢籍類約28,000冊よりなります。『太平記抄抜書』・『たまむしのさうし』等の貴重和書もありますが、研究実用書が主で、斯道文庫の研究・教育活動に大いに活用されています。部分的な目録に、山城喜憲「永青文庫寄託 坦堂文庫目録 漢籍 経部」『斯道文庫論集』28輯・1993、「同 史部(上)」同37輯・2003、「同 史部(下)」同38輯・2004があります。

コルディエ文庫 (函架番号ホ)

 同じく永青文庫の所蔵で1973年に寄託された、フランスの東洋学者アンリ・コルディエ(Henri Cordier・1849~1925)旧蔵の東洋学関係の研究書を中心とする洋書約5,000冊からなります。15世紀のインキュナブラ(初期活版本)や、スタインやペリオを初めとするコルディエと同時代の著名な学者の署名入り論文抜刷等、貴重な資料も多く含まれています。目録に慶應義塾大学附属研究所斯道文庫編『コルディエ文庫分類目録』1979があります。

明治仏教史編纂所蔵書

 宗教法人神田寺の所蔵で、1983年に寄託されました。同寺を建立し慶應義塾大学予科の講師でもあった仏教学者友松円諦(ともまつえんたい・1895~1973)が主宰した、明治仏教史編纂所が蒐集した仏教関係資料で、宗派や寺院関係を主とする雑誌や新聞727種と、和漢書約2,530冊からなります。国会図書館にも所蔵されていない珍しい資料も多く、仏教学関係の研究者にも利用されています。目録に、明治仏教史編纂所編『明治仏教史編纂所所蔵目録』1972があります。

センチュリー文化財団寄託品(函架番号セ)

 財団法人センチュリー文化財団は、旺文社社長であった故赤尾好夫氏が、文字文化の資料を永久に保存すべく1979年に設立した財団です。慶應義塾が2008年に創立150年を迎えたことを記念し、その所蔵美術品1,740点が慶應義塾に寄託されることとなりました。センチュリー文化財団の所蔵品は、財団設立の趣旨にあるように、文字文化に関する資料が中核をなしており、日本の書道史を概観するのに必要十分な資料がバランス良く収集されています。また同財団が美術館を運営していたことからも判るように、それらには美術的価値の高い文字資料が豊富なばかりでなく、絵画資料や工芸品等も良質なものが含まれています。加えて「文庫」として1点に数えられるものは、約15,000冊からなる古典籍で、書道関係のものを中心に多岐にわたる内容の書物が揃っています。
 これらの資料は研究に活用するとともに、展示会を行って広く公開することになっています。展示の予定は新着情報に随時掲載します。


その他の貴重書

 この他にも、斯道文庫には、麻生家より寄付されたものや、賛助員会寄付金、文部省補助金等によって購入された、貴重書・準貴重書を約600点所蔵しています。国書では、古今集注釈書や歌学書を中心とする古写本、平家物語・太平記などの軍記物語等の古写・古刊本が、漢籍では日本の古写本や、宋版・元版等の中国古刊本、 また日本人による漢籍注釈書類が蒐書の柱となっています。『慶應義塾大学附属研究所斯道文庫 貴重書蒐選 図録解題』(平成9)に紹介されていますので参照してください。。

特殊文庫寄託資料その他の貴重書